さいたま市議会議員のSNS投稿により最近話題になりました母子健康手帳、いわゆる母子手帳について、「母子手帳って何?」「なんでそんな名前なの?」という疑問について考えてみたいと思います。
父親の子育て参加の観点から「母子手帳」を「親子手帳」にという名称変更の働きかけがあり、一部で論争が起こっています
先に私の考えを述べておくと「名前はそんなに重要ではないのでは」です
名前と本来の役割

母子手帳は正確には母子健康手帳といい、母子保健法第16条の規定に基づき妊産婦に交付されます
記載内容については母子保健法施行規則第7条に規定があります
主な記載内容(一部抜粋)は
- 日常生活上の注意、健康診査の受診勧奨、栄養の摂取方法、歯科衛生等妊産婦の健康管理に当たり必要な情報
- 育児上の注意、疾病予防、栄養の摂取方法等新生児や乳幼児の養育に当たり必要な情報
- 予防接種の種類、接種時期、接種に当たつての注意等予防接種に関する情報
- 妊娠週数に応じた妊婦自身の記録(体調や気持ちなど)
- 妊娠中や出産後の経過(腹囲や体重、尿・血液検査数値等)
- 出産の状態(分娩経過や出産時の児の状態等)
- あかちゃんの健康診査記録
となっています
母子保健法の目的は
母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もつて国民保健の向上に寄与する
こととされ、また
母性は、すべての児童がすこやかに生まれ、かつ、育てられる基盤であることにかんがみ、尊重され、かつ、保護されなければならない
乳児及び幼児は、心身ともに健全な人として成長してゆくために、その健康が保持され、かつ、増進されなければならない
とあります。
このような目的を果たすために母子手帳があるわけなので、役割としてはあくまで、母親と生まれてくる子どもの心身の健康を増進するためのツールです
一方で、母子保健法第4条第2項には
乳児又は幼児の保護者は、みずからすすんで、育児についての正しい理解を深め、乳児又は幼児の健康の保持及び増進に努めなければならない
とあり、ここでいう保護者には当然父親も含まれているはずなので、母子保健の考え方の中で父親にも大切な役割はあるのだと言っているものだと思います
さいたま市議会議員の意見は

今回意見を発信された議員は、母子健康手帳が母子健康法に基づき作成されており、お母さんと子どもをつなぐ手帳という一定の理解を示したうえで、母子手帳という名前のために「だから妊娠出産は母親の仕事、父親は関係ない」といった考えが潜在的に残っていることが問題だと主張されています
そして、名称を「母子手帳」から「親子手帳」へ変更するべきだと委員会で提案をされています
名前変更がもたらすメリット・デメリット

仮に母子手帳の名称を親子手帳に変更した場合どういったことになるのでしょうか
一般に言われているメリットについては、母親以外の保護者の出産育児への参加意識が高まることだとあるのですが、私は少し懐疑的で、私自身、母子手帳の名称のために何か出産育児参加に対するモチベーションなりが影響を受けるイメージがありません
ただ、「そう思われる(意識が高まる)方もいらっしゃるのかな」といった程度です
一方、デメリットですが、母子手帳の本来の母子保健に則した目的からずれてしまわないかという懸念です
父親の育児参加に注目するのもいいのですが、本来大切にされるべき妊産婦がどこか置いてきぼりになっていないかと思ってしまいます
母子健康手帳は記載すべき内容が法によって示されていますし、名前が変わり急に役割が変わるというものでもないでしょう
ですが、名は体を表すという言葉があるように、名前が変わることで内容が追いかけるように改正されていくのではと考えています(例えば、父親に関することへの記載が増えるなど)
父子手帳なんていうのもあります
いろいろ書きましたが個人の意見としては、「表向きの名前はどっちでもいいのでは」です
現に、親子手帳という名称を採用している自治体もあります(あくまで通称扱い?で、かっこ書きで母子手帳と記しています)
父親の育児参加を促したり、サポートする目的で父子手当なるものを交付している自治体もあります
こちらのサイトがまとめてくださっています

父子手帳は健康管理ではなく育児をサポートという意味合いが強く、母子手帳と同等のものととらえることはできないと思いますが、自治体なども父親の育児参加が母子にとってとても大切なことと位置づけ、しっかりと取り組みたいということだと思います
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